2005年10月28日
Sの彼女
小瓶を見つめていた。
奈津美からあの日に手渡された、Sの忘れ物。
この小瓶に「S」の愛がつまっている・・・?
下りの電車は徐々に混雑してきて、
私の足をサラリーマンが踏みつけるほど。
結婚する前を思い出す、懐かしくもある嫌気さ。
私は溜息を押し殺して、目的の駅まで目を閉じる。
小瓶を握り締めて。
彼女なら知ってる。
いや、多分この小瓶は彼女のものだ。
少しの確信を持っていた。
病院はいつも暗い。
待合室にいくら人がいても、とても暗い。
私は受付を通り過ぎてエレベーターに乗る。
その廊下の奥に彼女の病室はあった。
これで何度目だろう・・・。
Sが消えてしまってからは初めての訪問。
あの少女。
眠ったままの少女。
Sがたった一人愛した少女。
少女のまま眠る、美しくも憎らしい彼女。
扉を開けると、パーテーションの奥に人影を見た。
「こんにちは。」
小さく声をかける。
奥からのぞいたのは、彼女の母だった。
「あら、りょうちゃん。」
「お久しぶりです。ちょっと寄ったんですが・・・」
すごくやせ細ったその母は、口元で笑って手招きをした。
「あの、どうですか?」
「相変わらずよ。でもね、少し目が動くのよ最近。」
乱れるはずもない布団を首元まで直して、椅子を進めてくれた。
「榛名ちゃんに見せたいものがあって。」
「あら、なに?」
私は小瓶を取り出した。
「何かしら?知らないわ・・・榛名、これ知ってる?」
彼女の母は小瓶を榛名の顔に近づけて、一緒に覗き込む様なふりをした。
「Sが持ってたんです。」
少しの間を置いて、「彼が?」と。。。
Sがいなくなったことを少し話した。
女たちのことは隠して。
母はなんともいえないという表情で、首を少しかしげた。
「これ置いていきます。多分榛名ちゃんの物だと思いますから。」
私は少女の顔を覗き込んで、その寝顔に心をを無にした。
どうして、Sと彼女はこうなってしまったのか。
やっぱりSを探さねば。
わいてくる嫉妬や、迷いが粘るように私に張り付く。
碧く、どろりとした感情。
「約束してたのよ。」
母の声が私の心を遮る。
「Sとね、榛名が約束していたの。でも行かなかったの。」
「え?」
「海に行きたいって、眠る前に言っていたのよ。」
・・・・。
「約束したからって。でも、行けなかったのね。病気を知っていたから・・・」
小さく溜息をついて、病室からの空を見上げた。
私の碧い汚い感情が、溶けて空を泳ぐように。
いや、飛んで空に消えていくように。。。
ひらひらと、いつの間にかきらきらとした感情に摩り替わる。
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いっぺん参加作品
お題
「ラッシュアワー/約束の場所/青い蝶が」
投稿者 さゆりん : 2005年10月28日 14:30
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コメント
榛名 が読めない(バカ)
とうとうSの本当に愛した人登場?
でも、なんか、もしかして違う愛??
あー、だめだぁ。わからないー。
投稿者 ひまわり : 2005年10月29日 13:16
れれっ、もう一本書いたの??
TBすればいいのにぃ。もったいない★
なんか、りょうちゃんって寂しいな。
最初にS宅を訪ねた女の人・・・名前忘れちゃった!汗
彼女はどうしているんだろ。近頃気になるなり。
投稿者 葉月 萩 : 2005年10月29日 14:54
ひまわりへ
榛名は「はるな」だよ(笑)
榛名は番外編にも出てきてるのよ♪
「Sの愛」ってので。。。
もうすぐ終わりの予定よ★
葉月さんへ
加奈ちゃんです★
加奈バージョンを書いてからTBしたいんですが。。。
今日は無理(TT);
彼女がキーワードなんだけど・・・;
気にしてくれて嬉しい♪
でも、彼女はすごいんですよ^^
うひひひ★
投稿者 さゆりん : 2005年10月30日 02:03
うひひひ*
が気になるんだけど、次のお題をもう出してしまってですね。
いやぁ、絶妙な展開。
読み終わるのヤだから、なるべく「書けなさそうな」お題を考えることにしましょうか。ええ、本当に意地汚い性格なので、がははは*
投稿者 小日向 : 2005年10月30日 23:35
小日向さんへ
これからがノリノリで書けそうな、ラストに向かう予定なんですが。。。
わたしもSに未練があって。。。
いろんな背景を書いていたいです・・・^^;
今回は編集前に入れられるように
頑張ります★
意地悪お題も、ちょっぴり楽しみ。。。?
投稿者 さゆりん : 2005年10月31日 00:54
