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<title>人生模索中</title>
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<copyright>Copyright (c) 2007, sayurinchan</copyright>

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<title>オトナ</title>
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<issued>2007-10-15T01:32:57Z</issued>
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<created>2007-10-15T01:32:57Z</created>
<summary type="text/plain">どうして　オトナは　夜泣くのだろう 心を開放するということに　 とても　とても　臆病で無知 我がままになるのではなく　敵をつくるのでもなく 後ろを見ないというのも　違う それは　愛するということでも良いと思う 愛することは　真っ白な心 束縛するのではなく　こちらを向かせるのでもなく 共に歩くのも　違...</summary>
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<![CDATA[<p>どうして　オトナは　夜泣くのだろう</p>
<p>心を開放するということに　</p>
<p>とても　とても　臆病で無知</p>
<p>我がままになるのではなく　敵をつくるのでもなく</p>
<p>後ろを見ないというのも　違う</p>
<p>それは　愛するということでも良いと思う</p>
<p>愛することは　真っ白な心</p>
<p>束縛するのではなく　こちらを向かせるのでもなく</p>
<p>共に歩くのも　違う</p>
<p>ただ　ただ　見つめるだけで　それでいい</p>
<p>どうして　オトナは　昼に微笑うのだろう</p>
<p>一人で歩むことに　とても　臆病で</p>
<p>子供のように　蹲ることにも　臆病で</p>
<p>確かめる術を　知らずに過ごす</p>
<p>だから　オトナは　夜に泣くのだろう</p>]]>
<![CDATA[<p>&nbsp;</p>
<p>&nbsp;</p>]]>
</content>
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<title>イレブン・ストーリーズⅢ葵とハル</title>
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<modified>2007-09-26T14:08:16Z</modified>
<issued>2007-09-26T14:08:16Z</issued>
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<created>2007-09-26T14:08:16Z</created>
<summary type="text/plain">何かを考えるときに私は両の手のひらを眺める。 どこかつるっとしていて、指の長さに比べると手のひらの割合が大きい。 父親譲りの「器用貧乏な手」。 手相は薄くて、必要な限りにしか線がなく、それも薄い。 手のひらにふわりとなにか、軽くて輝いていて・・・雪の結晶のようなものが降ってくる様だ。 一瞬の無心の後...</summary>
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<![CDATA[<p>何かを考えるときに私は両の手のひらを眺める。<br />
どこかつるっとしていて、指の長さに比べると手のひらの割合が大きい。<br />
父親譲りの「器用貧乏な手」。</p>
<p>手相は薄くて、必要な限りにしか線がなく、それも薄い。</p>
<p>手のひらにふわりとなにか、軽くて輝いていて・・・雪の結晶のようなものが降ってくる様だ。</p>
<p>一瞬の無心の後に包み込むような想いが徐々に一まとまりになっていく。<br />
こういう時間が好きだった。<br />
悩むことも、時には楽しいもので、私は手のひらを眺めて過ごす時間を愛している。<br /></p>]]>
<![CDATA[<p>幼いころから、これといったコンプレックスがなかった。<br />
言い出せばきりがないけど、他者であればそれに値するものはたくさんある気もするけど。<br />
背が低く、常に前から一番という長い年月が続いたことや、成績が中の中であること。<br />
家庭の環境は特に悪くはなかったが、働き者の母が常に父の会社に介入していて<br />
小学校も高学年になるころには、下校時刻にも帰宅しなくなり一人ですごす午後が長かったことも。</p>
<p>私はなぜか茫漠としている子供で、転校によるいじめなども特に気にしなかったので<br />
いじめている本人たちを呆れさせるほどだった。<br />
それが目的だったというのではなく、とにかく時の流れを眺めているのが好きだった。<br />
この状況が苦しいとか楽しいとか、そんなことは記憶にしかならないとわかった風でいた。</p>
<p>特別辛いという思いを、精神的に成熟した年齢に達するまで経験しなかったのは私にとって幸せなことだ。<br />
現実的に辛いことがあっても、家庭内で解決することができた。<br />
それくらい、私は恵まれた環境で育ったと思う。</p>
<p>ハルに出会ったのは中学一年の時だった。</p>
<p>不思議だった。<br />
それまで出逢ったことのない雰囲気で、自由奔放な発言や個性的な容姿と華奢な身体が<br />
少女なのか成熟したメスなのか理解に困る。<br />
<br />
偶然にも進学した高校でも同じクラスになり、私は心の中でだけハルに強く惹かれていた。</p>
<p>憧れなんだと確信したのは、私が始めて好きになった男の子がハルのことを<br />
「クラスで一番かわいい」と言った事でだった。<br />
嫉妬心が沸くわけでもなく、好きなアーティストが偶然同じだったときのような感動。<br />
<br />
「私も！」</p>
<p>と、思わず喜んだ私を彼は笑ったけど、私は心底喜んでいた。<br />
今思えば、やっぱりおかしいという気もするけど、思い出してもうれしい発言だ。</p>
<p>もともとコンプレックスもなければ、執着するということもなかった私だけど<br />
彼のことは好きだったし、彼にも好きになってもらいたいと思っていたはず。<br />
それでもハルは特別で、もしも彼がハルを本気で好きになったとしても私は許したと思う。</p>
<p>そんなハルは、中学時代に輪をかけて自由だった。<br />
自由に見えた。そう振舞っていたともいえる。<br />
教室以外で接点を持たない私たちだったけど、ハルは誰かがいる場所ではどこにいても変わらない様に見えた。<br />
<br />
ただ、その自由さは、羽があるように柔らかく軽やかというのではなくて、<br />
足枷のついた裸体のようなものだった。<br />
地よりも深い場所で、そこにいることを忘れるために重い身体に鞭打つような自由。<br />
私が柔らかく暖かい快適な檻の中で、行動範囲を限られた自由を持っていたなら<br />
対してハルは、壮大な闇の中で光を発しながらどこまでも黒い物を集めて回るような。<br />
互いに反抗心はなく、自分自身の中にだけそれを持ち合わせている不自由な自由だった。</p>
<p>相反する不自由と自由に惹かれていたのは間違いない。</p>
<p>ハルの世界に興味を深く示してはいたが、私は立ち入ろうと思ったことは一度もない。<br />
黒いものを隠そうともしないハルが好きだったし、ハルの一から十を理解しようとした。<br />
そして、それに喜びや楽しみを見出していたのだ。<br />
<br />
私たちはそれぞれ特定の友達がいて、中学のなじみという形が三年間続き<br />
親友という形をとることは学生時代にはなかった。</p>
<p>運命はすでに始まっていたが、知らなかった。</p>
<p>そして、繰り返される偶然。</p>
<p>私たちは何度も出逢った。</p>
<p>電車で。駅で。路で。そして、今につながる路をゆっくりとたどっていった。</p>
<p>もう、お互いが新しい苗字になってからのことだ。<br />
私たちは抱えきれないものが形となり、未来になり、過去を反芻することでしか解決しないまでになって。<br />
不明瞭な形を縁取り、私たちは多数決に完全に負けて。<br />
生きる場所を模索しながら、「普通」に翻弄されながら、不良であることを自覚した大人だった。</p>
<p>そして、母になるという新しい場面で再会し急速に寄り添ったのだ。</p>
<p>私は立ち止まり、ハルは立ち尽くした。</p>
<p>手のひらの中できらきらと輝く想い。<br />
一筋の糸が振ってきて、私の感情が静まっていく。<br />
<br />
これから、ハルと私におきたことを書いていく。<br />
「違う」という中で育った子供が大人になり、親になって「普通」という言葉に収まろうと<br />
必死にもがいた結果を。</p>
<p>私は立ち尽くし、ハルは立ち止まった。</p>
<p>私たちは、相反する中で闇を受け入れたのだ。</p>]]>
</content>
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<entry>
<title>イレブンストーリーズ・Ⅱ葵の場合①</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://marplus.net/usagi/archives/2007/09/26_023743.php" />
<modified>2007-09-26T08:24:31Z</modified>
<issued>2007-09-25T17:37:43Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2007:/usagi//3.584</id>
<created>2007-09-25T17:37:43Z</created>
<summary type="text/plain">ベランダに一筋の煙を点てる。 小さな寝息を確認したら、私はベランダに出て雲を眺める。 昼間のこの時間の空の向こうには、過去の思いや胸に抱える難題の答えがある。 一筋の煙と共に雲に心を泳がせる。 昔、私は存在を消したかった。 今日の雲の流れた軌道を、明日誰もが忘れているように 私は誰の過去にもならずに...</summary>
<author>
<name>sayurinchan</name>
<url>http://sayu.marplus.net</url>
<email>sayurinchan@marplus.net</email>
</author>

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://marplus.net/usagi/">
<![CDATA[<p>ベランダに一筋の煙を点てる。<br />
<br />
小さな寝息を確認したら、私はベランダに出て雲を眺める。<br />
昼間のこの時間の空の向こうには、過去の思いや胸に抱える難題の答えがある。<br />
一筋の煙と共に雲に心を泳がせる。</p>
<p>昔、私は存在を消したかった。</p>
<p>今日の雲の流れた軌道を、明日誰もが忘れているように<br />
私は誰の過去にもならずにうっすらとした記憶の一部に過ぎない、そんな人間になりたかった。</p>
<p>&nbsp;</p>]]>
<![CDATA[<p>特別何もできなかったし、特別できないものもなかった。<br />
そこそこの得意と、まあまあの不得意。<br />
そんな中で特に主張したいこともなかったのに、何かが目立っていた。</p>
<p>誰もが「違う」と言った。</p>
<p>私と言う存在は、なにか他者に対して自信を奪うようなものを持ち合わせ、<br />
時折自分でも知らないうちに不愉快と言うよりは、恐怖に似ている感情を抱かせるのだった。<br />
かといって人を貶めたり、無駄に攻撃をしたりするでもなく、飄々とそこにいて<br />
私自身がそれに気づかずに生活していたのだ。<br />
それ故に、攻撃してこないのならと相手から言葉によって先制されたりもした。</p>
<p>私は競争すると言う意識が苦手だ。</p>
<p>なぜ競い合うのか。</p>
<p>競い合うことを仕事としない限り、それに心を奪われて日常のほとんどの情熱を注ぐと言うのはいかがなものか。<br />
なんにせよ、自分の能力を測るというのは大切だと思うが、他者と比べて良いだの悪いだのと言うのが<br />
何よりも嫌悪感を覚えていたのだ。</p>
<p>それは家庭環境にもかなり影響されてのことだが、我が子を抱いてはじめてわかる。<br />
そうか、もう始まっているのだな。</p>
<p>「産まれたときは何グラムだったの？」</p>
<p>何の疑問も抱かずに受けた質問に、「娘は3000グラムちょうどでした。」<br />
肥満通告された妊婦ライフを送った私にしては、まあまあ優秀な成績だ。<br />
昔は大きい子を産むと褒められたりしただろうが、栄養が行き届いているとか米文化の憧れの象徴など<br />
そういったものの影響も大きくあったのだろう。<br />
最近では、産む前から妊婦の体重も厳しく管理され、出産時に適している子供の体重は<br />
2700グラムぐらいなんて話を聞いたくらいの私は、3000グラムなら自分の体重の管理のがさつさを責められない<br />
ギリギリの胎児の体重と判断していたのに。</p>
<p>「うちはね、3900グラムだったのよ～。」</p>
<p>間延びした、どこか勝ち誇ったようなその初対面の産婦に動揺してしまう。</p>
<p>比べるということがもう始まっているなんて。<br />
それはお互いの価値観をまったく無視したやり取りを、こんなに突然強いられるなんて。<br />
こんなことにどれだけ慣れていけばいいのだろう。</p>
<p>生まれたばかりの娘を抱いて、途方にくれるような感情に襲われた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>一筋の煙と空高い雲が重なり合って、私の思考が戻ってくる。</p>
<p>私は常識人である自信が人並みにはあるが、私の常識が通用しない世界ではどう暮らしたらいいのだろう。<br />
常に迷い、常に考え、常に答える。そして実行。<br />
それを今までもこれからも繰り返していくのだ。</p>
<p>だから私は反抗する。</p>
<p>たった一つの反抗。<br />
小さな子供を持っていながらの喫煙。<br />
夫の家族の誰もが嫌煙家というなかで、私は絶対にタバコをやめない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>私がハルのような女の子だったら・・・。</p>
<p>時々思う。</p>
<p>ずっとずっと思ってきた。<br />
憧れにも近い感情で、私は同級生のハルを見てきた。</p>
<p>私にとってハルはいつも心が自由だったから。</p>
<p>この空の向こうにいつも、私はハルを思う。<br />
<br />
私はずっとハルになりたかった。</p>
<p>・・・・・・・・そして、着信音。</p>
<p>ハルからの電話。<br />
<br />
私はいつもこの電話に気持ちをスタンバイさせている。<br />
スウィッチはいつもＯＮだ。</p>
<p>私はハルになりたかったから。<br />
今のハルに何が起こっていても、これからの彼女がどんな人生を歩もうとも。<br />
私は彼女に憧れてやまない。</p>]]>
</content>
</entry>

<entry>
<title>イレブンストーリーズ・Ⅰハルの事</title>
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<modified>2007-09-26T08:23:31Z</modified>
<issued>2007-09-25T16:59:18Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2007:/usagi//3.581</id>
<created>2007-09-25T16:59:18Z</created>
<summary type="text/plain">それはそれは青い空で。 先週造ったばかりの、手作りテラスはペンキの斑があちこちにあり 私はそれすら愛おしいと思っていたのに。 ついさっきまでは。 濡れた洗濯物をテラスに運び、肩越しには窓を隔てた小さな世界があって。 私の最愛という生きた宝が弾のようにはねては転がって。 それはこの上なく幸福の象徴だと...</summary>
<author>
<name>sayurinchan</name>
<url>http://sayu.marplus.net</url>
<email>sayurinchan@marplus.net</email>
</author>

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://marplus.net/usagi/">
<![CDATA[<p>それはそれは青い空で。</p>
<p>先週造ったばかりの、手作りテラスはペンキの斑があちこちにあり<br />
私はそれすら愛おしいと思っていたのに。</p>
<p>ついさっきまでは。</p>
<p>濡れた洗濯物をテラスに運び、肩越しには窓を隔てた小さな世界があって。<br />
私の最愛という生きた宝が弾のようにはねては転がって。</p>
<p>それはこの上なく幸福の象徴だと思っていたのに。</p>
<p>ついさっきまでは。</p>
<p>本当にたった一瞬前までは、私の全てが満たされていると感じていたのだ。<br /></p>]]>
<![CDATA[<p>見上げたら青い空。</p>
<p>吸い込まれる様に私の思考は宙をひらひらと、しかし急速に。<br />
空へ空へと飛び立っていって・・・。</p>
<p>そして、不安。</p>
<p>昇っていった思考は糸のように細く、細く。<br />
まるで蜘蛛の糸のようにきらきらと儚いもので、それをなんだか捕らえるのも難しいというのに、<br />
一度その限りなく藍い青の空間に消えたと思った思考は、姿を変えて戻ってきた。</p>
<p>まるで巨大な隕石が私にだけ向って落ちてくるように。<br />
まるでブラックホールが徐々に近づいてくるように。<br />
まるで、まるで・・・竜巻のように勢いよく、しかし徐々に。</p>
<p>私に降りかかり、辺りは私にだけ暗黒を招く。</p>
<p>洗濯物がひらひらと風に揺れる午後。</p>
<p>冬の終わりを完璧に告げて、日差しはやさしく暖かい。<br />
時折吹く風は冬の名残を残す冷たさで、私の頬を撫でた。</p>
<p>振り返ると子供が二人。<br />
<br />
何度張り替えても無残に破かれる網戸を揺らして、その体から発するとは思えない声を上げ<br />
人間ではない何かに変身して動き回っている。<br />
愛おしいと思っていたペンキの斑がたまらなく気になりだす。</p>
<p>だめだ。</p>
<p>さっきまで全てが幸福の象徴だったというのに！<br />
<br />
天使の声がビルを破壊するほどの騒音に変わる。<br />
<br />
だめだ。だめだ。だめだ。</p>
<p>気がつけばひとつの斑を、洗ったばかりのタオルで擦りだす私がいる。<br />
わかってる。わかってる。<br />
今私がしている行動を私は理解している、なのに止められない。</p>
<p>音はどんどん大きくなり、私の胸の中からもしてくる音と重なる。</p>
<p>どん<font size="5">どん・・</font><font size="6">どん・・どん・・</font>
<font size="7">どんどんどん！！</font></p>
<p><font size="3">だめだ、だめだ。止まれ！</font></p>
<p>動悸は激しくなり、わかってる、この後の結果を私は知っている。<br /></p>
<p><font size="6">「やめてええええっ！！！静かにしてっ」</font></p>
<p>ほらね。</p>
<p>そして、沈黙。</p>
<p>今の私がどうなっているかも知っている。</p>
<p>きっと、泣く気もないのに涙が止まらなくなってて、体中がブルブルと震えている。<br />
わかっているけど、わかっているのに。</p>
<p>まったく感覚がない。</p>
<p>私じゃない。</p>
<p>私じゃない。</p>
<p>私は、幸せな私はこうじゃない。</p>
<p>こうじゃない。</p>
<p>誰か。誰か。誰か。。。。</p>
<p>手垢だらけのくすんだガラス窓の向こう側に見える小さな二つの顔。<br />
釣りあがった私の眼を恐れ、哀れみ、そして呆然と見つめている。</p>
<p>誰か。誰か。誰か。。。。</p>
<p>私を助けて。</p>
<p>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。</p>
<p>長い沈黙が私を襲い、落ちるとも昇るともわからないこの心の空間が堪らなく不安。</p>
<p>次には息ができなくなって、もっとすごい恐怖が襲ってくるのがわかる。<br />
それはどんどん近づいてきているのだ。<br />
<br />
そうだ。</p>
<p>こんなときは彼女に電話しなきゃ。</p>
<p>そうだ。そうだ。思い出した。</p>
<p>電話。</p>
<p>見えない糸が私と彼女をつなぐ。<br />
それはきらきらとして、まるで蜘蛛の糸のように。</p>
<p>その前に薬を飲んで。</p>
<p>そして、あれもやらなくちゃ。<br /></p>
<p>それはそれは青い空。</p>
<p>限りなく藍い青、私の眼には紅。</p>
<p>その糸はきらきらとふわり飛び立って、私は私というものから解放されるのだ。</p>
<p>&nbsp;</p>]]>
</content>
</entry>

<entry>
<title>アンドレ・ジッドの妄想</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://marplus.net/usagi/archives/2006/05/02_204652.php" />
<modified>2006-05-02T11:57:08Z</modified>
<issued>2006-05-02T11:46:52Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2006:/usagi//3.397</id>
<created>2006-05-02T11:46:52Z</created>
<summary type="text/plain">彼女の踝にしゃぶりつきたい衝動。 軽い、春らしいスカートは少し流行おくれな雰囲気で その黒く重々しい髪に似合っていた。 ひどく困惑した面持ちで、彼女はその細い踝をもじもじとさせ 「Ｎさん、ですか？」 と、弱々しく尋ねた。 「はい。」 僕のその声は多分、まるで黒板の問題をわかるかと尋ねられ わかりもし...</summary>
<author>
<name>sayurinchan</name>
<url>http://sayu.marplus.net</url>
<email>sayurinchan@marplus.net</email>
</author>
<dc:subject>800字</dc:subject>
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<![CDATA[<p>彼女の踝にしゃぶりつきたい衝動。</p>
<p>軽い、春らしいスカートは少し流行おくれな雰囲気で<br />
その黒く重々しい髪に似合っていた。<br />
ひどく困惑した面持ちで、彼女はその細い踝をもじもじとさせ<br />
「Ｎさん、ですか？」<br />
と、弱々しく尋ねた。</p>
<p>「はい。」</p>
<p>僕のその声は多分、まるで黒板の問題をわかるかと尋ねられ<br />
わかりもしないのにわかると答えてしまったときのように<br />
あまりにも業とらしく聞こえただろう。<br />
彼女は口角だけで微笑んで、<br />
「お手紙をありがとうございます。いつも・・・。」<br />
と、今度は多くの困惑を隠しもしないで言った。<br />
「迷惑なのは承知でした。でも、あまりにも貴方が不憫で。」<br />
そして、儚く美しくて。<br />
こう続けることは、僕には出来なかった。</p>
<p>彼女に手紙を書いたのは、彼女の父であるＫ氏の葬式から<br />
三日もたたないうちだったと思う。<br />
黒のスーツに身を包んだ彼女。<br />
艶やかな肌が、その黒という色の毒々しさの中に隠れて<br />
透き通るように輝いていた。<br />
友人であり、恩師であるＫ氏の死を目の前にしてもなお、<br />
その娘である彼女の黒いストッキングの中に隠れた踝に息を呑まずに入られなかった。<br />
僕は手紙を書いた。<br />
最初の手紙は、いかに父であるＫ氏に世話になったか。<br />
Ｋ氏を亡くした事をどれほど苦々しく感じているか。<br />
これから先の彼の家族の行く末をどれほど心配しているか。<br />
最後に、何か役に立てないか？と付け加えるのを忘れなかった。</p>
<p>彼女からの返事はすぐに届いた。<br />
当たり障りないもので、父の死はとても残念で仕方がないけれど<br />
行く末は大丈夫だから心配は要らないということだった。<br />
とても繊細で優しい文字だった。<br />
それからすぐに僕はまた返事を書き、<br />
彼女の手紙に安心したということをまず書き、<br />
自分のことをＫ氏との思い出を含めて書いた。<br />
それにも彼女は丁寧な返事をくれた。<br />
僕は浮き足立って多くの手紙を書いた。<br />
１０行に1行はＫ氏のことを書いて。</p>
<p>とうとう、彼女から個人的に会いたいという返事が来た。<br />
Ｋ氏の葬式から10週目の日曜日だった。</p>
<p>僕は一度見たきりのあの踝に多くの野望を持っていた。<br />
もう、彼女そのものは僕の手中にあるかのような気持ちでいたのだ。<br />
彼女は携帯電話のストラップがかばんからはみ出しているのを気にしながら席に着き<br />
僕の正面に座ると、とうとうその携帯電話をかばんに押し込んだ。<br />
「僕のことを覚えていましたか？」<br />
僕は自信にみなぎる口調で聞いた。<br />
彼女はなおもストラップのことを気にしながら、目線だけ僕に向いて首を振った。<br />
少しの驚きと、黒い絶望感が影を伸ばして近づいていたが<br />
僕はもう、彼女の踝を掴んでいると確信していたので驚きしか思考に入らなかった。<br />
「・・・どうして、会いたいといってくれたのでしょうか？」<br />
彼女はかばんをしっかりと放さずに握り締めて言った。</p>
<p>「こんなオヤジじゃないと思ったからね。」</p>
<p>僕はすぐさま言葉を返すことは出来なかった。<br />
すると、彼女の口角は意地悪く引き上げられてなおも続けた。</p>
<p>「パパのお葬式に来ていて、わたしに手紙をくれるなんて！<br />
絶対にパパの講義を受けていた学生だと思うじゃない！」</p>
<p>最後のほうは、怒りに任せているといった口調で<br />
彼女は立ち上がり<br />
「この、変態！」<br />
小さく呟く様に、しかしまっすぐと僕を見ていった。</p>
<p>僕は教授であるＫ氏の学生ではなく、学友なのだった。<br />
ひどくうなだれた気分で、彼女のスカートからひらひらと見える踝を見守った。</p>
<p>あの踝は、僕のものだったのに。</p>
<p>僕がデブでハゲの５０歳でなければの話だ。</p>
<p>&nbsp;</p>]]>

</content>
</entry>

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<title>イタミ。。。</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://marplus.net/usagi/archives/2006/02/16_175825.php" />
<modified>2006-02-16T08:58:26Z</modified>
<issued>2006-02-16T08:58:25Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2006:/usagi//3.336</id>
<created>2006-02-16T08:58:25Z</created>
<summary type="text/plain"> 君の痛みにね もしも 僕の傷が必要なら どんなに深い痛みにも 耐えて見せよう 君の痛みにね もしも 僕の血が必要なら どんなに紅い液体でも 流して見せよう 君の痛みにね もしも 僕の愛でも必要としてくれるなら どんなに深い海にでも この身を投げて見せよう だから 君は君を傷つけないで もしも 僕を...</summary>
<author>
<name>sayurinchan</name>
<url>http://sayu.marplus.net</url>
<email>sayurinchan@marplus.net</email>
</author>

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://marplus.net/usagi/">
<![CDATA[<p>&nbsp;</p>
<p><a href=
"http://marplus.net/usagi//media/file_20060216T175824557.jpg"
   target="_blank"><img title="tr01"
     height="180"
     alt="tr01"
     src=
     "http://marplus.net/usagi//media/img_20060216T175823576.jpg"
     width="164" /></a></p>
<p>君の痛みにね</p>
<p>もしも</p>
<p>僕の傷が必要なら</p>
<p>どんなに深い痛みにも</p>
<p>耐えて見せよう</p>
<p>君の痛みにね</p>
<p>もしも</p>
<p>僕の血が必要なら</p>
<p>どんなに紅い液体でも</p>
<p>流して見せよう</p>
<p>君の痛みにね</p>
<p>もしも</p>
<p>僕の愛でも必要としてくれるなら</p>
<p>どんなに深い海にでも</p>
<p>この身を投げて見せよう</p>
<p>だから</p>
<p>君は君を傷つけないで</p>
<p>もしも</p>
<p>僕を信じてくれるなら</p>
<p>きっと</p>
<p>君を愛して見せるから</p>
<p>愛が君を救うなら</p>
<p>風呂いっぱいの紅い液体でこの身を沈め</p>
<p>君のために泣こう</p>
<p>僕の死など</p>
<p>風のように</p>
<p>君の髪を少し揺らして</p>
<p>通り過ぎていくだろう</p>
<p>&nbsp;</p>]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>身の回りバトン☆</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://marplus.net/usagi/archives/2005/11/12_023425.php" />
<modified>2005-11-11T17:36:33Z</modified>
<issued>2005-11-11T17:34:25Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2005:/usagi//3.229</id>
<created>2005-11-11T17:34:25Z</created>
<summary type="text/plain">葉月さんからのバトン☆ やる前から面白そう♪ お題から連想されるものや人を回答するみたいです。。。 お題。。。 １．信号待ち ２．駅前 ３．教室 ４．パソコン ５．写真 ６．おそろいのキーホルダー ７．お守り ８．ランドセル ９．シルバーのネックレス １０．赤ペン １１．助手席 １２．ベビーカー １...</summary>
<author>
<name>sayurinchan</name>
<url>http://sayu.marplus.net</url>
<email>sayurinchan@marplus.net</email>
</author>
<dc:subject>私のことも少し・・・</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://marplus.net/usagi/">
<![CDATA[<p>葉月さんからのバトン☆</p>
<p>やる前から面白そう♪<br />
お題から連想されるものや人を回答するみたいです。。。</p>
<p>お題。。。</p>
<p>１．信号待ち<br />
２．駅前<br />
３．教室<br />
４．パソコン<br />
５．写真<br />
６．おそろいのキーホルダー<br />
７．お守り<br />
８．ランドセル<br />
９．シルバーのネックレス<br />
１０．赤ペン<br />
１１．助手席<br />
１２．ベビーカー<br />
１３．体重計<br />
１４．時計<br />
１５．お風呂<br />
１６．灰皿<br />
１７．チョコレート<br />
１８．カレンダー<br />
１９．雑誌<br />
２０．ベット<br />
２１．マグカップ<br />
２２．洋楽<br />
２３．寝癖直し<br />
２４．制服<br />
２５．オルゴール<br />
<br />
感想は？<br /></p>
<p>では、いってみます☆</p>]]>
<![CDATA[<p>１：信号待ち</p>
<p>恋に似ているもどかしさ。<br />
赤信号の向こうの相手が、こちらを向いているうちに渡りたい。</p>
<p>２：駅前</p>
<p>人ごみ、風俗の看板。<br />
行き交う人の人生模様の背中。</p>
<p>３：教室</p>
<p>夕暮れ。年をとるごとにセピア色。<br />
昔とても恋した人。</p>
<p>４：パソコン</p>
<p>ただの機械。<br />
それ自体はね。。。<br />
<br />
<br />
５：写真</p>
<p>空しき栄光。<br />
過去の虚栄を映し出す罪作りな存在。<br />
確かにあったということが、また悲しい。</p>
<p>６：おそろいのキーホルダー</p>
<p>？？？<br />
何故か金閣寺。<br />
中学の時の先輩を思い出す。<br />
「いつか会いたい、未来の恋人」<br />
と、修学旅行でお土産にキーホルダーに彫ってもらったって。。。<br />
見せてもらったら・・・<br />
「いつか会いたい、未来の変人」<br />
になってた・・・（汗）<br />
<br />
７：お守り</p>
<p>昔の失恋。<br />
私の人生にとっても必要だった、最高のお守り。<br />
「そんなに好きじゃなかった。」<br />
その言葉が今の私のお守り。<br />
それを聞かなかったら、ずっと待っていたと思う。</p>
<p>８：ランドセル</p>
<p>亮くん。<br />
小学校６年生の時転校してきた少年。<br />
背が中学生みたいに高くて、ランドセルがすっごくおかしかった背中。<br />
「好き」って、初めて本人から言われた人。</p>
<p>９：シルバーのネックレス</p>
<p>祖母。<br />
シルバーじゃないけど、プラチナのネックレスを成人のお祝いにくれた。<br />
今は私の結婚指輪に形を変えて、いつも身に着けている。<br />
これが祖母からの贈り物でなければ、とっくに捨ててる（爆）！</p>
<p>１０：赤ペン</p>
<p>不幸の手紙。<br />
貰ったことも書いたことも無いけど・・・<br />
どんなことが書いてあるんだろう？<br />
「明日死ぬ」とか？<br />
<br />
１１：助手席</p>
<p>パルサー<br />
この車で結婚前、夫が大事故。<br />
トラックに吹っ飛ばされてぶつかった電信柱が車を真っ二つにした。<br />
私を送った帰り道に出会った事故。<br />
もしも助手席にのってたら・・・即死だった。<br />
あんな大事故だったのに、夫無傷。<br />
すごいなあ・・・と、尊敬する運のよさ。</p>
<p>１２：ベビーカー</p>
<p>Shio（私の長女）<br />
初めてベビーカーを押してお散歩した日を、今も思い出せる。<br />
冷たい風がぴゅーっと吹くのを気にしながら。。。<br />
かわらのサイクリングロードを、娘の顔ばかり見ながら歩いた。<br />
私の宝物の思い出。</p>
<p>１３：体重計</p>
<p>・・・。<br />
久しくのってないなあ。。。<br />
今年の二月、肺炎にかかった時以来。<br />
あの時はすごかったな・・・３５キロまで落ちた。。<br />
癌かと思った。</p>
<p>１４：時計</p>
<p>物事の常識に似ている。<br />
正しくもあれば、狂っている可能性もある。<br />
<br />
この世の全てを焦らせるもの。<br />
チクタク・チクタク・・・・<br />
あの音がいかん！<br />
あの音を聞くだけで、挙動不審になる・・・。<br />
だから、家には秒針のある時計は無いに等しい。</p>
<p>１５：お風呂</p>
<p>蝋燭。<br />
月に一度はろうそくの明かりで入りたい。<br />
アロマオイルをたらして、何も考えない時間が欲しい。<br />
うっかりしてるといつも考え事ばかりしてしまうから。</p>
<p>１６：灰皿</p>
<p>コーヒー。<br />
コーヒーを淹れた後のかすを乾燥させて、灰皿に入れている。<br />
<br />
１７：チョコレート</p>
<p>堀内三佳。<br />
「夫すごろく」の著者。<br />
チョコレートが大好きなんだって☆<br />
そんなに好きって言う人を初めて見た（読んだ？）から印象的。<br />
<br />
・・・本当は「鼻血」って思ったけど、乙女の恥じらい。</p>
<p>１８：カレンダー<br />
<br />
まるでおせっかいな人みたい。<br />
見たくも無いのに、つい見てしまう。<br />
うっかりしていると、書き記すことすら忘れて・・・<br />
「ほら、ちゃんと書いておかないから。」<br />
って、苦笑されてるみたいで嫌だ。</p>
<p>１９：雑誌</p>
<p>私。<br />
立ち読み常習犯。<br />
そんなに毎日見に来るなら買えよ！<br />
って、そのうちきっと言われると思う・・・；</p>
<p>２０：ベット</p>
<p>福田和子。<br />
先日死んでしまいましたね・・・<br />
彼女がもてた理由に、すごいテクニシャンだったという都市伝説があって。。。<br />
何となく思い出しました。</p>
<p>２１：マグカップ</p>
<p>同棲。<br />
とか、新婚。<br />
必ずおそろいのを買うよね。。。<br />
家にも渋いのがありますよ。<br />
<br />
２２：洋楽</p>
<p>中学の時の英語の先生。<br />
モンキーズのCDを卒業する時にくれた。<br />
嬉しかったけど、卒業後に下心まで見せてくれたので・・・<br />
思い出としては美しくない。<br />
<br />
２３：寝癖直し</p>
<p>江頭２：５０。<br />
あんな頭なのに、寝癖とか気にしちゃうんだって☆<br />
可愛いなあ・・・と思って。</p>
<p>２４：制服</p>
<p>斉藤由紀。<br />
「卒業」を歌った時の彼女・・・コスプレした熟女の貫禄。<br />
忘れられない。<br />
それから、村上龍。トパーズとかね・・・。<br />
前に新橋の交差点で信号待ちをしている時に、セーラー服を着ている女の子が隣に・・・<br />
って、何故新橋に？女子高生？<br />
チラッと見たらおばさんだった！！！<br />
これが噂のホテトル嬢！？って、心臓がバクバクした。<br />
サイン貰いたかった。</p>
<p>２５：オルゴール。<br />
<br />
中学の時の後輩。<br />
全然話したこと無いのに、突然プレゼントされた。<br />
「好き」って言われたのはずっと後で、過去形だった。<br />
今でも持ってるよ。<br />
オルゴールが好きだったから。<br />
たくさんの中に混じって。。。<br /></p>
<p>おしまい☆</p>
<p>いやあ・・・難しいのもたくさんありました＾＾；<br />
的外れなものも多数・・・（汗）。</p>
<p>駆け足で終わらせてしまいましたが・・・いつかまたやりたいな。<br />
って思いました。<br />
<br />
<br />
次に回すのは・・・<br />
ひまわりとかどうですかね？</p>]]>
</content>
</entry>

<entry>
<title>Ｓの背中</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://marplus.net/usagi/archives/2005/11/10_011120.php" />
<modified>2005-11-09T16:14:37Z</modified>
<issued>2005-11-09T16:11:20Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2005:/usagi//3.225</id>
<created>2005-11-09T16:11:20Z</created>
<summary type="text/plain"> Ｓが居なくなってから。。。 私は毎日Ｓの家で眠っている。 Ｓを待っているわけではない。 Ｓを征服したような気持ちに酔い痴れているような・・・ 私の夜は明け方始まる。 店を出て、私のアパートの前を通り過ぎ始発に乗り込むのは変な気分。 その扉を開けると、正面奥に見える朝日に碧く照らされたソファ。 一人...</summary>
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<name>sayurinchan</name>
<url>http://sayu.marplus.net</url>
<email>sayurinchan@marplus.net</email>
</author>
<dc:subject>私の理由</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://marplus.net/usagi/">
<![CDATA[<p><a href=
"http://marplus.net/usagi//media/file_20051110T011119636.jpg"
   target="_blank"><img title="cl_cat_1_4"
     height="180"
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     src=
     "http://marplus.net/usagi//media/img_20051110T011119125.jpg"
     width="150" /></a></p>
<p>Ｓが居なくなってから。。。<br />
私は毎日Ｓの家で眠っている。<br />
Ｓを待っているわけではない。<br />
Ｓを征服したような気持ちに酔い痴れているような・・・</p>
<p>私の夜は明け方始まる。<br />
店を出て、私のアパートの前を通り過ぎ始発に乗り込むのは変な気分。</p>
<p>その扉を開けると、正面奥に見える朝日に碧く照らされたソファ。<br />
一人掛けのそれはＳの背中に見える。<br />
今にもくるりと振り返りそうな。。。</p>
<p>私はそれに深く座り、Ｓの残り香を探すのを楽しんだ。<br />
もう一週間。<br />
まるで詩人にでもなったように、ステンレスの月をただ見つめる。<br />
今日がいつで終わったのか、そしてもう明日になっているのか。。。<br />
私の今日はいつでも砂のように落ちていった。</p>
<p>Ｓも・・・</p>
<p>私の今日と同じように、留まることなくするりと抜け落ちて<br />
いつも私の前を歩く。<br />
見つめる女など振り返りもせず。</p>
<p>Ｓの服をだぼだぼと着て出勤する私に、周囲の目が怪しさを帯びているのを感じる。<br />
その度に私は恍惚に酔うのだ。<br />
私はＳの部屋で暮らし、自分のものを持たずＳの物を身にまとう。</p>
<p>この椅子で薄い眠りにつき、Ｓを思う。<br />
眠りの中ですら私はＳ一色だ。<br />
あの冷たい目が、記憶から妄想に塗り替えられていく。<br />
そうだ、私はＳが居なくなるのを待っていたのだ。<br />
と思うくらいに、私の一週間は充実していた。</p>
<p>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・！」</p>
<p>今まで鳴ることのなかった電話が鳴った。<br />
背筋が凍る。<br />
Ｓ？<br />
まさかね。<br />
もしもＳなら、ここには電話をかけない。</p>
<p>「・・・もしもし・・・？」<br />
恐るおそる出てみる。<br />
好奇心だった。</p>
<p>「もしもし！？加奈ちゃん？私！涼子！」<br />
電話の向こうで、りょうちゃんが怒鳴る。</p>
<p>「・・・・。」<br />
「どうしても会いたいの。時間取れない？」</p>
<p>「・・・いつ？」<br />
「早いうちがいいの。」</p>
<p>「今日？店に出る前なら・・・。」<br />
「何時？加奈ちゃんに合わせるから、時間と場所。」</p>
<p>「じゃあ、4時にこの下の喫茶店で。」<br />
「わかった。」</p>
<p>そして何も言わずに切った。<br />
りょうちゃんが何故私に会いたいのか。<br />
私にはわかっている気がした。<br />
りょうちゃんはＳの居場所をつかんだ？</p>
<p>「まさかね。」<br />
声に出して、窓を開ける。<br />
冷たい風が身体を通り過ぎ、そして消えた。<br />
下を見下ろすと、駐車場で黒い何かが車にひかれて死んでいた。<br />
猫。<br />
小さいその死体を見下ろし、<br />
「まさかね。」<br />
と、もう一度つぶやいた。</p>]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>Sの彼女</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://marplus.net/usagi/archives/2005/10/28_143034.php" />
<modified>2005-11-09T16:12:33Z</modified>
<issued>2005-10-28T05:30:34Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2005:/usagi//3.207</id>
<created>2005-10-28T05:30:34Z</created>
<summary type="text/plain"> 小瓶を見つめていた。 奈津美からあの日に手渡された、Ｓの忘れ物。 この小瓶に「Ｓ」の愛がつまっている・・・？ 下りの電車は徐々に混雑してきて、 私の足をサラリーマンが踏みつけるほど。 結婚する前を思い出す、懐かしくもある嫌気さ。 私は溜息を押し殺して、目的の駅まで目を閉じる。 小瓶を握り締めて。 ...</summary>
<author>
<name>sayurinchan</name>
<url>http://sayu.marplus.net</url>
<email>sayurinchan@marplus.net</email>
</author>
<dc:subject>私の理由</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://marplus.net/usagi/">
<![CDATA[<p><a href=
"http://marplus.net/usagi//media/file_20051028T143034247.jpg"
   target="_blank"><img title="cl_chou_2_1"
     height="180"
     alt="cl_chou_2_1"
     src=
     "http://marplus.net/usagi//media/img_20051028T143033366.jpg"
     width="139" /></a></p>
<p>&nbsp;</p>
<p>小瓶を見つめていた。</p>
<p>奈津美からあの日に手渡された、Ｓの忘れ物。<br />
この小瓶に「Ｓ」の愛がつまっている・・・？</p>
]]>
<![CDATA[<p>下りの電車は徐々に混雑してきて、<br />
私の足をサラリーマンが踏みつけるほど。<br />
結婚する前を思い出す、懐かしくもある嫌気さ。<br />
私は溜息を押し殺して、目的の駅まで目を閉じる。<br />
小瓶を握り締めて。</p>
<p>彼女なら知ってる。<br />
いや、多分この小瓶は彼女のものだ。<br />
少しの確信を持っていた。</p>
<p>病院はいつも暗い。<br />
待合室にいくら人がいても、とても暗い。<br />
私は受付を通り過ぎてエレベーターに乗る。</p>
<p>その廊下の奥に彼女の病室はあった。<br />
これで何度目だろう・・・。<br />
Ｓが消えてしまってからは初めての訪問。<br />
あの少女。<br />
眠ったままの少女。<br />
Ｓがたった一人愛した少女。<br />
少女のまま眠る、美しくも憎らしい彼女。</p>
<p>扉を開けると、パーテーションの奥に人影を見た。<br />
「こんにちは。」<br />
小さく声をかける。<br />
奥からのぞいたのは、彼女の母だった。<br />
「あら、りょうちゃん。」<br />
「お久しぶりです。ちょっと寄ったんですが・・・」</p>
<p>すごくやせ細ったその母は、口元で笑って手招きをした。<br />
「あの、どうですか？」<br />
「相変わらずよ。でもね、少し目が動くのよ最近。」<br />
乱れるはずもない布団を首元まで直して、椅子を進めてくれた。<br />
「榛名ちゃんに見せたいものがあって。」<br />
「あら、なに？」<br />
私は小瓶を取り出した。</p>
<p>「何かしら？知らないわ・・・榛名、これ知ってる？」<br />
彼女の母は小瓶を榛名の顔に近づけて、一緒に覗き込む様なふりをした。</p>
<p>「Ｓが持ってたんです。」</p>
<p>少しの間を置いて、「彼が？」と。。。<br />
Ｓがいなくなったことを少し話した。<br />
女たちのことは隠して。</p>
<p>母はなんともいえないという表情で、首を少しかしげた。<br />
「これ置いていきます。多分榛名ちゃんの物だと思いますから。」</p>
<p>私は少女の顔を覗き込んで、その寝顔に心をを無にした。<br />
どうして、Ｓと彼女はこうなってしまったのか。<br />
やっぱりＳを探さねば。<br />
わいてくる嫉妬や、迷いが粘るように私に張り付く。<br />
碧く、どろりとした感情。</p>
<p>「約束してたのよ。」<br />
母の声が私の心を遮る。<br />
「Ｓとね、榛名が約束していたの。でも行かなかったの。」<br />
「え？」<br />
「海に行きたいって、眠る前に言っていたのよ。」<br />
・・・・。</p>
<p>「約束したからって。でも、行けなかったのね。病気を知っていたから・・・」</p>
<p>小さく溜息をついて、病室からの空を見上げた。<br />
私の碧い汚い感情が、溶けて空を泳ぐように。<br />
いや、飛んで空に消えていくように。。。</p>
<p>ひらひらと、いつの間にかきらきらとした感情に摩り替わる。</p>
<p>＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊</p>
<p>いっぺん参加作品</p>
<p>お題</p>
<p>「ラッシュアワー／約束の場所／青い蝶が」</p>
<p>&nbsp;</p>]]>
</content>
</entry>

<entry>
<title>Ｓの涙</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://marplus.net/usagi/archives/2005/10/24_212618.php" />
<modified>2005-11-09T16:13:05Z</modified>
<issued>2005-10-24T12:26:18Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2005:/usagi//3.201</id>
<created>2005-10-24T12:26:18Z</created>
<summary type="text/plain"> 気がつけば霧雨。 こんな日はＳのことを思い出す。 改札の階段を、滝のように流れ下りてくる人混み。 まるで滝のように、決まった服装の塊が ドバッと流れてはまばらになり、少しの間を置きまた塊になる。 「あなたが津田さんかしら、津田奈津美さん？」 女は４０代半ばといったところ。 あの男の奥さんにしては若...</summary>
<author>
<name>sayurinchan</name>
<url>http://sayu.marplus.net</url>
<email>sayurinchan@marplus.net</email>
</author>
<dc:subject>私の理由</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://marplus.net/usagi/">
<![CDATA[<p><a href=
"http://marplus.net/usagi//media/file_20051024T212613538.jpg"
   target="_blank"><img title="cl_butter_1_1"
     height="180"
     alt="cl_butter_1_1"
     src=
     "http://marplus.net/usagi//media/img_20051024T212612918.jpg"
     width="157" /></a></p>
<p>気がつけば霧雨。</p>
<p>こんな日はＳのことを思い出す。</p>
<p>改札の階段を、滝のように流れ下りてくる人混み。<br />
まるで滝のように、決まった服装の塊が<br />
ドバッと流れてはまばらになり、少しの間を置きまた塊になる。</p>
]]>
<![CDATA[<p>「あなたが津田さんかしら、津田奈津美さん？」<br />
女は４０代半ばといったところ。<br />
あの男の奥さんにしては若い。</p>
<p>「そう。」<br />
私は看板でも見るかのように、無機質な視線を女に向けた。<br />
「どうぞ。」<br />
喫茶店の窓から、流れる人ごみの中にこの女もいた。<br />
白のスーツが目立っていたから、きっとそうだと感じていた。<br />
あの男はこういう女を嫌っていたから。</p>
<p>「あまり時間がないので、率直に。いいかしら？」<br />
「どうぞ。」<br />
女は、こんなところは一秒でも早く立ち去りたいといった様子。<br />
「主人の生前には、津田さんには大変お世話になったという手紙が出てまいりましたの」女は店員に差し出されたメニューを手で断り、続けた。
<br />
「それで、失礼かと思いましたが。。。これを。」<br />
一枚の小切手。<br />
私は金額も見ずに受け取り、かばんにしまった。<br />
女は呆れたという顔をして、そして嘲笑した。<br />
「もっと拗れるかと思いましたけど、よかったわ。」<br />
そして、「受け取るとも思いませんでしたから。」<br />
と言って、笑った。<br />
「私の仕事は、あなたのご主人の愛人でしたから。」<br />
受け取るだけの理由がある。</p>
<p>女はハッキリと「愛人」と言う言葉をきいて、表情を一変させた。<br />
「でもね、私は彼に何一つ頼みごとはしてないんだよ。奥さん。<br />
　私が彼に頼まれて、愛人をしてたんだ。」</p>
<p>何もいわずに睨み付けるだけの女に、<br />
「電車が込んでいるので気をつけて。」<br />
と言って、席を立たせる。<br />
タバコの煙がふわりと窓に張り付き、改札へ続く階段が曇った。</p>
<p>そこにＳが立っていた。</p>
<p>煙が消える頃に、女がＳの横を通り過ぎて階段を姿勢よく上っていく。<br />
Ｓがこちらを見た瞬間だった。<br />
気がつけば、雨粒。<br />
私はなぜか、Ｓから目が離せなかった。<br />
泣いているようで、立ち尽くす姿が。<br />
雨に揺らめいて碧く、まるで飛べない蝶が止まっているかのようで。</p>
<p>あの日あの男に呼び止められたのは、私がこんな姿だった時かも。</p>
<p>なじみの喫茶店から借りた傘を差し出すと、<br />
「何処から来たの？」<br />
と聞かれたんだった。</p>
<p>「何処からでもないけど、行きたい所に行けなくなったからここに来た。」</p>
<p>あんたは何してるの？</p>
<p>「約束の場所への行き方が、思い出せないんだ。」</p>
<p>これがＳと私との出逢いだった。</p>
<p>＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊</p>
<p>いっぺん参加作品</p>
<p>お題</p>
<p>ラッシュアワー／約束の場所／青い蝶が</p>]]>
</content>
</entry>

<entry>
<title>私の理由　番外編～Ｓの愛</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://marplus.net/usagi/archives/2005/10/14_232119.php" />
<modified>2005-11-09T16:13:30Z</modified>
<issued>2005-10-14T14:21:19Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2005:/usagi//3.186</id>
<created>2005-10-14T14:21:19Z</created>
<summary type="text/plain"> 少女はまだ、少女のままの恋をしていた。 彼はまだ少女のままでいる彼女を、少女のままに愛していた。 水曜の夕暮れ時、彼は彼女の小さな柔らかい手をとって 口元だけで微笑んだ。 「海に行く？」 少女は小さく頷いて、彼の手をきゅっと握り返した。 秋の夕暮れを、少女は彼の手を離さずに歩いた。 彼は少し優しく...</summary>
<author>
<name>sayurinchan</name>
<url>http://sayu.marplus.net</url>
<email>sayurinchan@marplus.net</email>
</author>
<dc:subject>私の理由</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="ja" xml:base="http://marplus.net/usagi/">
<![CDATA[<p><a href=
"http://marplus.net/usagi//media/file_20051014T232118478.jpg"
   target="_blank"><img title="cl_sea_1_1"
     height="180"
     alt="cl_sea_1_1"
     src=
     "http://marplus.net/usagi//media/img_20051014T232117176.jpg"
     width="197" /></a></p>
<p>少女はまだ、少女のままの恋をしていた。<br />
彼はまだ少女のままでいる彼女を、少女のままに愛していた。</p>
]]>
<![CDATA[<p>水曜の夕暮れ時、彼は彼女の小さな柔らかい手をとって<br />
口元だけで微笑んだ。</p>
<p>「海に行く？」</p>
<p>少女は小さく頷いて、彼の手をきゅっと握り返した。</p>
<p>秋の夕暮れを、少女は彼の手を離さずに歩いた。<br />
彼は少し優しく、口元で微笑んだ。<br />
その曲がり角を曲がると、海が見える。<br />
波にまぎれて、海に混ざる人を見る。<br />
高い波が飲み込んでは、また現れる夏の忘れ人を。<br />
少女と彼は、まるで他人事で見つめていた。<br />
それが、映像であるかのように。<br />
そこに物語は無く、今感じる手の柔らかさと頼もしさだけが<br />
物語だと信じていた。</p>
<p>その急な坂を、ちらほらといる人々にまぎれて歩く。<br />
何の目的も無く、ただ上へ。<br />
そして、また下る。<br />
反対の海を見るために。<br />
人の浮かばない海。</p>
<p>途中で少女はみやげ物に立ち止まる。<br />
それは小さな硝子の小瓶に、到底この海のものではないであろう砂の入った<br />
つまらないよくあるみやげ物。<br />
少女はそれをひとつ手に取り、彼の顔に近づけた。</p>
<p>「みて、未来の物語がつまってる。」</p>
<p>彼女のいたずらのような微笑に、彼は無言で微笑んで<br />
それを年老いた店主から買い取った。</p>
<p>「ほら、未来が手に入った。」</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>洞窟まで下ると、そこには自然の音響が現実の映像とともに響いていた。<br />
ひんやりと寒い洞窟で、彼と少女は黙っていた。</p>
<p>いつも黙っている二人だった。</p>
<p>来た道を、下ったものを上り上ったものを下って<br />
また、海に飲まれては浮き上がる人を見る。</p>
<p>「いつまでもそのままでいいよ。」<br />
彼は少女の顔を見ずに、その手を離した。</p>
<p>少女は初めて、自分が少女のままだと知った。<br />
彼は少年ではないと。</p>
<p>しばらくした後、夕日が傾ききってやっと彼女が言った。<br />
「そんなわけには、いかないの。」<br />
彼女は彼の腕に顔を沈めて、ゆっくりと目を閉じた。<br />
そして、小さな小瓶を取り出して。</p>
<p>「私の未来をあげる。」</p>
<p>彼の美しい手に握らせた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>Ｓという名の彼の手に。</p>]]>
</content>
</entry>

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<title>Ｓの影</title>
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<modified>2005-11-09T16:13:52Z</modified>
<issued>2005-10-11T14:13:40Z</issued>
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<created>2005-10-11T14:13:40Z</created>
<summary type="text/plain"> 水曜の夕暮れ時。 小さな駅の前で、奈津美という女の子を待っていた。 会った事も無い彼女をただ、目でウロウロと探していた。 「涼子さん？」 可愛らしい、幼さを残す声で振り返ると、 Ｓと関係があったとはとても思えない、若々しい彼女が立っていた。 「奈津美さん？」 「そうそう。とりあえず、どっか入ろう。...</summary>
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<email>sayurinchan@marplus.net</email>
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<dc:subject>私の理由</dc:subject>
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<![CDATA[<p><a href=
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   target="_blank"><img title="namida_4_1"
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     width="130" /></a></p>
<p>水曜の夕暮れ時。<br />
小さな駅の前で、奈津美という女の子を待っていた。<br />
会った事も無い彼女をただ、目でウロウロと探していた。</p>
]]>
<![CDATA[<p>「涼子さん？」<br />
可愛らしい、幼さを残す声で振り返ると、<br />
Ｓと関係があったとはとても思えない、若々しい彼女が立っていた。<br />
「奈津美さん？」<br />
「そうそう。とりあえず、どっか入ろう。」<br />
奈津美は私の腕を戸惑いもなしに、引っ張り喫茶店へと向かった。<br />
彼女の屈託の無さが、またＳの存在からは不可解なものに感じていた。</p>
<p>奈津美は真っ直ぐに、奥の窓際の席へと座った。<br />
「ここが指定席なの。」<br />
えくぼのある笑顔で、真っ直ぐに私を見る。<br />
「あの曲がり角でね・・・」<br />
彼女は窓から、駅のすぐ脇の電信柱を指差していた。<br />
「Ｓが立ってたの。泣いてるみたいだったのよ。」<br />
奈津美は今までに無い表情で、その先を見つめていた。<br />
「泣いてるみたい？」<br />
「うん。Ｓを知った後では考えられないんだけど。」</p>
<p>ー本当に泣いてるみたいに見えたの。。。</p>
<p>私も知ってる。<br />
Ｓの泣いているような、たたずむ姿を。</p>
<p>「あの人何ってたっけ？本命彼女。」<br />
語尾を少し茶化し、奈津美はメニューを私に渡した。<br />
「かなちゃん？加奈子さんだよ。」<br />
「ああ、そうそう。あの女ちょっとあれだよねえ。」<br />
「あれ？」<br />
「なんか、すっごく存在感のある陰気さじゃない？」<br />
わたしは、メニューに視線を落とした。<br />
「からかってやったんだ。あなたが本命でしょ？って。」<br />
最後は本当に笑っていた。<br />
「そしたらさあ、すっごく喜んだ表情で、自信満々でＳの部屋の後始末してんの！」<br />
「え？」<br />
「何人か女の名前に電話したんだけど、鍵を持ってたのは彼女だけだったの。」</p>
<p>私は何かが砕け散るような気持ちでいっぱいだった。<br />
Ｓの想い。<br />
私の思い。<br />
かなちゃんの想い。</p>
<p>「Ｓを探すの？」<br />
「うん。」</p>
<p>「なら、Ｓの忘れ物あげようか。」<br />
小さなバックから、ちいさな、小さな硝子の小瓶を差し出した。<br />
「Ｓってさ、家にいつも忘れ物するの。」<br />
「これ・・・。」<br />
「俺の愛情なんて、この瓶に入るくらいしかないんだ！って言ってたよ。」</p>
<p>奈津美と別れると、外はもう日も落ちて月が鮮明に顔を出していた。<br />
駅のホームで、小瓶を眺めＳを思う。<br />
小瓶に映る月が、膨らみ始めていた。<br /></p>]]>
</content>
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<title>Ｓの足音</title>
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<modified>2005-10-11T14:17:38Z</modified>
<issued>2005-10-01T15:52:27Z</issued>
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<summary type="text/plain"> 「涼子、まだここに居る？俺、搭乗券とって荷物預けてくるけど。」 正人は、優しい笑顔でテキパキと荷物を手に取った。 「うん。お願いする。」 私は自然と微笑み、甘えた仕草で正人の顔を見た。 正人は口元で笑って、荷物を両手に立ち去った。 Ｓを待っていた。 深夜に近い夜の空港。 作業服を着た、猫背の男が通...</summary>
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<dc:subject>私の理由</dc:subject>
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<![CDATA[<p><a href=
"http://marplus.net/usagi//media/file_20051002T002240896.jpg"
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     width="196" /></a></p>
<p>「涼子、まだここに居る？俺、搭乗券とって荷物預けてくるけど。」<br />
正人は、優しい笑顔でテキパキと荷物を手に取った。<br />
「うん。お願いする。」<br />
私は自然と微笑み、甘えた仕草で正人の顔を見た。<br />
正人は口元で笑って、荷物を両手に立ち去った。</p>
<p>Ｓを待っていた。<br />
深夜に近い夜の空港。<br />
]]>
<![CDATA[作業服を着た、猫背の男が通り過ぎる。雑誌を抱えて。<br />
気だるそうに通り過ぎざま、目が合う。<br />
細く鋭い目線。<br />
冷たく凍りつく。<br />
この目！誰かにそっくり。<br />
男から目をそらして、下を向く。</p>
<p>ため息が出そう。<br />
Ｓは来ないと思う。<br />
招待状を送った時は、確かに連絡があった。<br />
「結婚?馬鹿だねえ。」<br />
って、笑ったＳ。<br />
その昔の私の気持ちを知っていて。。。</p>
<p>Ｓが卒業した次の年、私たちの母校が夏の大会で最終まで残った。<br />
私の恋の決着をつけるため、私はＳを球場に誘った。<br />
その時もＳは、<br />
「県大会？凄いね。」<br />
と、笑って返事をしなかった。<br />
私が球場で待っていることを、Ｓは知っていて来なかった。<br />
従姉という立場から、解放されたかった。<br />
いつだってＳを見ていたのに。<br />
Ｓはいつも、私を横目で笑って無視するでもなく無視していた。<br />
私は知っていた。<br />
Ｓがいつも愛している相手を。</p>
<p>でも、もう私はあの球場で泣いたのを最後に、<br />
Ｓから開放されていた。<br />
あの球場で正人と出会い、本物の恋をして。<br />
暖かな気持ちを抱いて、結婚するのだ。<br />
Ｓに会いたい理由は、他にある。<br />
絶対に会わなくてはいけない理由。</p>
<p>私は携帯を手に取った。<br />
Ｓの携帯へ。<br />
電話中に、また猫背のあの男が通り過ぎる。</p>
<p>「リョウちゃん。」</p>
<p>聞きなれた声がして、上を向く。<br />
冷たい表情の細い目が私を見ていた。</p>
<p>「かなちゃん・・・」<br />
前髪を重たく落として、長めの黒髪を頬までたらし<br />
白く膨らんだ頬を覗かせる、その奥の表情。<br />
くり抜かれたような、奥深い目。<br />
私をいつも凍りつかせた、あの表情。<br />
「どうして・・・？」<br />
「Ｓは来ないよ。」<br />
うっすらと笑って。</p>
<p>彼女の手に鍵が。<br />
猫背の男とダブった瞳に怪奇を含んで。</p>
<p>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく</p>]]>
</content>
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<title>Ｓの残り香</title>
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<modified>2005-10-06T08:02:17Z</modified>
<issued>2005-09-24T17:26:51Z</issued>
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<summary type="text/plain"> Sはもちろん居なかった。 何事もなかったかのような、殺風景な部屋で私は息を殺した。 確かに何事もないのだな。 Ｓはここに、何事も置いていかなかった。 ゴミ箱にある、性交の跡形のみを除いては。 テーブルの上には、厚手の封筒が置いてあった。 結婚式の招待状だった。 手にとって、送り主を見ると。。。 「...</summary>
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<dc:subject>私の理由</dc:subject>
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<![CDATA[<p><a href=
"http://marplus.net/usagi//media/file_20050925T020912466.jpg"
   target="_blank"><img title="cl_chou_3bl_4"
     height="180"
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     src=
     "http://marplus.net/usagi//media/img_20050925T020911945.jpg"
     width="65" /></a></p>
<p>Sはもちろん居なかった。</p>
]]>
<![CDATA[<p>何事もなかったかのような、殺風景な部屋で私は息を殺した。<br />
確かに何事もないのだな。<br />
Ｓはここに、何事も置いていかなかった。<br />
ゴミ箱にある、性交の跡形のみを除いては。</p>
<p>テーブルの上には、厚手の封筒が置いてあった。<br />
結婚式の招待状だった。<br />
手にとって、送り主を見ると。。。<br />
「リョウちゃんだ・・・。」<br />
リョウちゃんはひとつ年上のＳの従姉。<br />
高校時代の先輩でもあった。<br />
そして、リョウちゃんはＳが好きだった。<br />
そんな思いを知っていて、Ｓはやはり冷たく笑いながら、<br />
私の肩をとったこともあった。</p>
<p>リョウちゃんは泣きながら走り去った。<br />
私はその涙を、自分と重ねてよく泣いた。<br />
そのリョウちゃんの走りぬけた先の午後には、幸せがあったのか。<br />
私はまだ、早朝を走っている様。<br />
走りぬけた午後には、さんさんと輝く太陽が現れるのだろうか?</p>
<p>そんな思いを抱えながら、封の開いてる招待状を見る。<br />
「ハワイで結婚式か・・・。」<br />
中には、まるで現実的な招待文が織り込まれたカードが入っていた。<br />
はらりと薄っぺらい紙が床に落ちた。</p>
<p>「１０月２日午前の便で発ちます。その前に会いたい。」</p>
<p>今日は１０月１日。<br />
明日。<br />
もしかしたら、Ｓは空港に現れるかもしれない。<br />
私は妙な予感がしていた。<br />
未だ信じられない、私がＳの本命説。<br />
もしかしたら、Ｓはリョウちゃんをさらう気かも。<br />
まさかね。</p>
<p>わたしはひとつしかない、一人掛けのソファに身を沈めた。<br />
少し躊躇しながら。そして、Ｓのあるはずのない体温を探すため深く。<br />
ゆっくりと沈んでいった。<br />
そして、目にしたのだ。<br />
ステンレスのコップに写る三日月を。<br />
それはコップの曲線により歪み、細く円を描いた満月。<br />
Ｓそのもの。<br />
Ｓの姿は三日月だけど、隠された内面は満月だった。<br />
「見つけた。｣<br />
小さくつぶやいた。</p>
<p>リョウちゃんが泣いていた午後を思い浮かべていた。<br />
明日、空港に行ってみよう。<br />
Ｓを探す気はない。<br />
ただ、Ｓの残り香を求めていた。<br />
どこかにあるはずの真実の香りを。</p>
<p>つづく。</p>]]>
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<title>Sの扉</title>
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<modified>2005-10-06T08:02:17Z</modified>
<issued>2005-09-18T18:54:35Z</issued>
<id>tag:marplus.net,2005:/usagi//3.151</id>
<created>2005-09-18T18:54:35Z</created>
<summary type="text/plain"> 昨夜の電話。 本当だろうか・・・? Ｓの失踪。 いつでも自分勝手なＳ。 自由奔放で、他人の怒りを買いそれでもその怒りさえも「クスリ｣と笑ったＳ。 だけど、怒りはかっても迷惑をかけたりする男ではなかった。 6年も付き合ってきた私こそが、いつもの浮気相手。 彼にとっての本命は、いつでも新しい女でわたし...</summary>
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<email>sayurinchan@marplus.net</email>
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<dc:subject>私の理由</dc:subject>
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<![CDATA[<p><a href=
"http://marplus.net/usagi//media/file_20050919T033119791.jpg"
   target="_blank"><img title="cl_moon_8_bl_2"
     height="180"
     alt="cl_moon_8_bl_2"
     src=
     "http://marplus.net/usagi//media/img_20050919T033119370.jpg"
     width="154" /></a></p>
<p>昨夜の電話。<br />
本当だろうか・・・?<br />
Ｓの失踪。</p>
]]>
<![CDATA[<p>いつでも自分勝手なＳ。<br />
自由奔放で、他人の怒りを買いそれでもその怒りさえも「クスリ｣と笑ったＳ。<br />
だけど、怒りはかっても迷惑をかけたりする男ではなかった。<br />
6年も付き合ってきた私こそが、いつもの浮気相手。<br />
彼にとっての本命は、いつでも新しい女でわたしは「いつもの浮気相手」<br />
新しい本命からの電話。</p>
<p>「あなたがＳの女でしょう?後始末はあなたがしてよ。」</p>
<p>じわりと闇が迫るような三日月の夜に、重い足取りでＳのマンションを目指す。<br />
重いはずの足取りは、何故か小走り。<br />
狭いエントランスが見える頃、私の足は出来る限りの速度で前進していた。</p>
<p>最後に訪れたのは、2ヶ月前。<br />
溜息をつきながら背にした、小さなエレベーター。<br />
行きも帰りも一人で乗るエレベーターで、今初めて私の心は躍っていた。<br />
何に?<br />
いったい何に、これほど胸を躍らせているのか。<br />
自分の狂気じみた鼓動に、不安と焦りすら感じながら。</p>
<p>「鍵持ってる?｣<br />
いつかのあの子だ。<br />
Ｓに冷たい笑いで追い返された、あの夜に私を笑った彼女。<br />
「もうすぐ管理人の人来るから。よかった、あなた来てくれて。来ないかと思ってた。」<br />
あの時と同じ、せせら笑い。<br />
｢じゃあ。｣<br />
彼女は寄りかかった扉から背中を離した。<br />
｢ちょっと待って、どうして私の電話・・・・。｣<br />
知るはずのない携帯に、昨夜電話してきたのは彼女だった。<br />
「ああ、これ。これも渡しとくね、あたしが持ってても仕方ないから。」<br />
彼女は小さなバックから、Ｓの携帯を取り出した。<br />
「これさあ、Ｓが落としたんだよね。あたしの部屋で、で壊れちゃったの。」<br />
思い出し笑いを浮かべて彼女は続けた。<br />
「どこにもかからなくて、こんなのいらねえ！って。おかしいよね。」<br />
せせら笑いじゃない彼女の笑い方は、本当に少女のような可愛さだった。</p>
<p>私は、管理人を待たずに部屋の扉を開けた。<br />
「本当の彼女は、あなただったよね?だって、鍵持ってるのあなただけだったよ。」<br />
彼女の言葉に心がときめいていた。<br />
Ｓの居ない部屋の扉に手をかけながらも。<br /></p>
<p>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく。。。</p>]]>
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